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「つまり君はあれかい」若い警官に変わって、初老の警官が少年に訊ねた。
「さっきの事故は、全て宇宙人の仕業だと」
「だからさっきからそう言ってるじゃないか!」
 少年は何度目になるか分からない同じ質問に、腹を立てているようだった。
「ね?さっきからずっとこの調子なんですよ」若い警官がやれやれと言った顔でこちらを見ている。
「嘘じゃない!僕は見たんだ!」
「まぁ、落ち着いて」初老の警官が優しい口調で嗜めてる。
「君、名前は何て言ったかな?」
「田畑コウイチ」
「コウイチ君。君が見たって言うのは宇宙人なのかな?」
「だから違うって!UFOが飛んできて、トラックとぶつかったんだ」
「なるほど、なるほど」初老の警官はノートに文字を書き出した。
「それでそのUFOはどこへ行ったのかな?」
「そんなの分からないよ、そのまま飛んでったから…」
「なるほどねぇー。あ、良かったらそのUFOの絵をここに書いてくれないかな?」
「ちょっと、大宮さん」若い警官が初老の警官の腕を掴んで、派出所の隅へと引っ張って行く。
「子供の嘘に決まってるじゃないですか。UFO?宇宙人?まさか信じてる訳じゃないでしょうね?」
「佐々木君は若いなぁ。まぁ私に任せてよ」大宮はニコリと笑うと、コウイチ少年の元へと戻っていった。
「書けたかな?見せて貰っても良いかな?おぉ、これはまさしくUFOだね」
「そうだよ。だからそいつがトラックにぶつかって…」
「コウイチ!!」突然派出所にキンキン声が響き渡る。
「あ、お母さん。聞いてよ、さっきそこでトラックが…」
「あんた、急にいなくなったと思ったら!おまわりさんのお世話になって!」
 コウイチ少年の母親はペコペコと大宮と佐々木に頭を下げる。
「本当にすみませんでした。ほら、コウイチもおまわりさんにお礼言いなさい!」
「え、何で?だってこっちのおまわりさんは話を全然…」
「良いから!」母親に叱られて、コウイチ少年はしょげかえってしまった。
「いえ、お母さん良いんですよ」ニコニコと笑顔を浮かべて大宮が言う。
「本当ご迷惑をかけてすみませんでした」頭を再度下げて、ふたりは派出所を出て行った。
「勝手にどっかひとりで言っちゃダメでしょ?」「だって、さっきUFOがね」「はいはい、UFOね…」

 田畑親子の後ろ姿を見送った後、佐々木が大宮に問いかけた。
「大宮さん、さっきの話。どういうつもりだったんですか?」
「どうするもこうするも、話を聞こうと思ってたさ。良いじゃないか、夢があって」ニコニコと大宮が答える。
「最近は現実的な子供ばかりになってしまったからね。まさかUFOを見た少年に会えるとは思わなかったよ」
「あーやっぱり信じて無かったんですね。僕はてっきり大宮さんまでUFOの仕業だと言い出すのかと…」
「いや、信じてるよ。UFOはいるよ。実は私も昔見た事があってね…」
「またまたぁーUFOなんかいるわけ無いじゃないですか」
 佐々木はUFOの影どころか、雲ひとつない青空を見上げて大きく伸びをした。




「良かったんですか?」隊員のひとりが話しかける。
「良かったって、何が?」「何がって、さっきの事故ですよ。見られたじゃないですか」
「ああ、あれか。問題無いだろう。いちいち対応してたら時間が足りなくなる」
「でも、これが原因で騒ぎにでもなったら、調査がやりづらくなるんじゃ…」
「あのな、君」隊長が椅子をくるりと回して立ち上がる。
「この星の生き物は、都合の悪い事や信じがたいの事の大概は嘘と言う事にしてしまうんだよ」
「そんな、まさか…」
「ましてやさっき目撃されたのは、まだ子供だったじゃないか。完全に嘘として処理されるよ」
「そんなものなんですか」
「そんなものなんだよ。こんな種族、他の星ではまず見られないからね。貴重な観測対象だよ」
 隊長は青く光る地球をUFOの窓越しに見ながら大きく伸びをした。
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2012.09.14 Fri l 遠野杏子 l コメント (3) トラックバック (0) l top

コメント

No title
たといシンジツで在っても、それがホントウの意味で真実になるのは難しいのかな…と考えさせられました。

大多数、権力者、マスコミが真実だと言えば虚構も真実に…
2012.10.01 Mon l あずほ. URL l 編集
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2012.10.01 Mon l . l 編集
No title
ユーモアのあるSFショートショート。非常に書き慣れている印象。星新一の印象が強過ぎるか。他の要素を折り込んだり独自性を模索してほしい。パロディ的な葉蔵君とはまた異なる既視感がある。ただこういった形式の場合新機軸を打ち出すことの困難さはわかる。「大きく伸びをした」の呼応など細部にも注意が行き届いている。
2012.10.01 Mon l オーロラ. URL l 編集

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