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音というよりも単なる物理的な振動だった。ガラス窓は軋み、皮膚が痺れた。放課後の部室棟、大音量の練習を始めると決まって近所からの苦情が寄せられ、俺たちはそれでも懲りずに毎日のようにその儀式を繰り返した。..

悲壮さを漂わせるようなリフは要らない。自分の彼女を後輩に抱かせるような禄でもないボーカルだった奴の声が、今も鼓膜の奥でゆれている。俺はイヤフォンのボリュームをリミットまで上げ切る。記憶の隙間を埋めるために。

バンドを組もう、と言い出したのはどちらからだったか。今となってはどうでも良い事だ。二人でギターを掻き鳴らし、声の限りに詞を叫び、そうして俺たちは青春を音楽に費やした。

俺たちが儀式を行わないようになってどのくらい経っただろうか?今日俺たちは、儀式が終わった後、必ず足を運んだ「insane」という店で再び集まることになった。俺たちは互いに顔を見合った。するとあの時の心と鼓膜に響いた音の振動が手に取るように蘇ってきたのであった。

一瞬何があったのかわからなかったが、耳を貫くノイズが走った。マサオが俺の機材を勢い余って踏みつけ、音は途切れた。我々の儀式を完成させるにはこのRAT2が必要だった。無残なその死骸を眼にして、俺はマサオに飛びかかった。

頬骨に拳の骨が当たる鈍い音を響かせる。ローズウッドのネックを叩きつけて、俺はマサオの眼底を窪ませた。木材の折れる音なのか奴の骨の響きなのかは分からない。フェンダーのアンプからは調音されたときのハーモニクスのような音色と6本の弦の野太い音が、不気味なほどに鮮やかに室外に漏れ聞こえた。

結局その騒動の所為で部活は無期限の活動停止を余儀なくされ、俺たちの儀式は簡単に潰されてしまった。ただ、骨折で2週間入院した程度では友情に亀裂が入る事も無く、こうして退院祝いを「insane」でする事が出来た。俺はさっきまで聞いていたイヤホンを首から外し、マサオに渡す。

マサオは黙ってイヤホンを受け取る。イヤホンから漏れた音がかすかに響く。その時、俺は、「俺」と「世界」と一体になった気がした。これは、音の振動空間の中で感じたものと同じであった。この一体感は「友情」の名の下に造られた虚構だったのか?否、俺たちは、「あの時の音」そのものをもう二度と復元することは不可能なのかもしれないが、「あの時の音」のエネルギーの源は、今も確かに俺たちの中にあると確信している。

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オーロラ、su、遠野杏子、ALG
12/10/13 約一時間程での合作
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2012.10.13 Sat l 合作 l コメント (1) トラックバック (0) l top

コメント

No title
 こちらも合作ということで楽しく読ませていただきましたが、前回とはがらりと異なる印象。ひとりひとり描写に凝っていて、今回は細部が非常に興味深かったです。その一方で、全体の話がみえずらくなっていたように思いますが、合作とのことですので致し方ない面もあると思います。
 参加する人によって完成する作品もかなり変わるようなので、合作は面白いなあというのが感想でした。
2012.10.15 Mon l 凛子. URL l 編集

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