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ある日、僕は彼を街で見かけた。
いつも通りの赤い帽子。それだけで僕は彼を彼だと判断出来た。
彼がこちらを振り返りそうだったので、慌てて物陰に隠れる。
――何で、隠れる必要があったんだ。
自分自身理由は分からないが、とにかく見つかりたくなかった。

そんな事をしている内に、彼は路地へと入って行く。
僕も適当な距離を保ちつつ尾行する。
彼は何度か路地を曲がると、一件の店の前で立ち止まった。
窓から中の様子を見ているようだ。
暫くすると彼は店へと入っていった。

素早く窓際に移動する。
看板を確認するが、何故か何も書かれていない。
店内の様子を窓からそっと伺う。
薄暗い店内は、しかし異様な光景が広がっていた。
赤帽子、赤帽子、赤帽子、赤帽子。
店内に居るのは、皆赤帽子を被った人間ばかり。
口元には、彼のような薄ら笑いが浮かんでいる。

彼は、どれだ。全員彼に見える。
そもそも僕は、彼の顔を、覚えているのか?
赤い帽子と薄ら笑い。それしか記憶にない。
なら、ここにいるのは皆彼じゃないのか?
彼ばかり何人も、ここにいるのか?
馬鹿げている、有り得ない。
だが僕には――誰もが同じに見える。

目眩がして、僕は窓から離れた。
くだらない。実に下らない。
同じ人間なんて、いやしないのに。
そう思った瞬間、背後に視線を感じた。
僕は振り返らずに、帽子を目深に被り直して、店へと入る。

尾行してきた「彼」が、物陰に隠れたのを、ガラスに映るのを確認して。

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2012.09.14 Fri l 遠野杏子 l コメント (1) トラックバック (0) l top

コメント

No title
短くシンプルにまとまっている。文の配置などは的確。形式は見事。位置関係の逆転は安部公房などに近いかも。主語が少し多いか。アイディア一発にしてはアイディア自体は弱い。もうひとひねりすると面白いかも。
2012.10.01 Mon l オーロラ. URL l 編集

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