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雨を避けて駆け込んだ喫茶店で、時計の長針は既に一周してしまった。
待てど待てど彼はやってこない。
約束の時間を決めるのはいつも彼なのに、遅れてくるのもいつも彼の方だ。
窓の外はいつまでも雨は止む気配もなく降り続いている。
あそこに雨雲がある。でも、今の私はどちらが東か西かなんてわからない。
「濡れたままだと、風邪引きますよ」窓の外を睨んでいた私に、誰かが声をかけてきた。
真っ白なタオルを渡してきたこの店の店員さんは、私と同年代の女性だった。
彼女の淡い唇に綺麗だと、女の私でも正直にそう思えた。
「待ち人来らず、ですか?」そう言うと彼女は珈琲カップを2つ、テーブルに置いた。
彼女は向かい側に座り、私に淹れたての珈琲を勧めながら静かに語り始めた。
「飲んでリラックス。コーヒーって合うも合わないも本人の好みなんです。あなたは彼と
「待ち合わせてた?昔、私がマスターに拾われた状況とそっくりだから、つい。
「一年ほど前、私も丁度同じ席で、ある人を待ちながら降り止まぬ雨を眺め続けてました。
「それでも、マスターは私のことを愛してくれた、きっとあなたも誰かに。ね!」
彼女の言葉と同時に扉が開き、その「誰か」と私はやっとデートを開始したのだった。
そう「彼」ルー大柴と。

合作 オーロラ日和/ゆゆ/遠野杏子
(責任編集・オーロラ日和)
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2013.04.24 Wed l 合作 l コメント (0) トラックバック (0) l top
時間は文字に穴を開けられて、
空を色で覆い、男や女の生き物の青春の時間をつないでいた。
それは個人の意思と抱き合う男達の「裸」の時間であった
時間は点滴のようにうるさくつながたままだ

耳を押さえると、凄まじい距離的接近を感じる打楽器のロマンスを発見し
やっと遠ざかっていったかと思うと。
完璧主義のあなたの肉体の両親があなたの自慰をせせら笑うのがわかる

江ノ島はあの冷たくも強い空気のなかに確かに女神が胎盤にくるまれている。
新しい女神が
2013.01.05 Sat l 悠々 月の遺族より l コメント (0) トラックバック (0) l top
 それは突然のことだった。
 朝なのに空は薄暗く、小さな雨の音が響いている。

 彼女からのメールを確認したのは、終電間際の、混雑した車内でのことだった。
 彼女は、実は、僕の妹である。
「お兄ちゃん、帰りにプリンかってきてよね」という内容であった。
 プリン…何の変哲もない兄妹のやり取りのようであるが、ふたりの間でのメールは暗号のごときもので満ちているのである。

 僕は予定の駅をみっつほど進んだ場所で降りた。
 改札を出て、西口へ出ると、頼まれたものが置いてある場所が視界に入った。
 そう、今月の20日には父親の誕生日が差し迫っているんだ、だから実家暮らしの僕らは、「プリン」というありきたりな言葉で贈り物がなんであるかを隠して行動しているのだが、その店舗に置かれてあるプリン、すなわち名刺入れは、ひと際あざやかに見えた。
 僕は、名刺入れを購入し、そこに父がご贔屓にしている、キャバクラの名刺をそっと、忍ばせた。
 そんな感じで、プレゼントを買うという目的も達成されたし、家路につくことにした。

 プリンとは、父の贔屓のキャバクラ嬢の容姿を揶揄した隠語であり、兄妹ふたりは一度だけその姿を拝見したことがある。
 華やかな身なりをしているけれど、生活の労苦がときおり瞳に翳る、スプーンで、掬って掬って、最後に黒いカラメルがつきあたるような、僕ら二人にとって彼女はそのような人だった。

 それは僕の精神の中で突然起きたことであったが、僕は「プリン」と呼ばれる女と実の母の姿を重ねずにはいられなくなった。
 うち父は、その彼女に対してエンジョをしている、そのことを僕ら兄妹は知っていたし、実の母よりも、その彼女の生活を第一にするようなそんな父だ、けれど、プリンのヨルの仕事が潤滑に行くように、名刺入れを買い与えてあげようというのが、父の思いやりで、僕自身は当初は賛同しきれない部分もあったけれど、プリンと一度会う機会があり、その彼女の人柄、苦境を知り、いつしか僕らはプリンに対して力になりたくなっていた。

 帰宅すると、妹が出迎えてくれ、そのまま僕等は夜を明かした。
 こんな乱れた家を実の母はどうおもっているのだろう、今度の母の日にはカーネーションでも買って持っていこうか、そう思いながら僕は名刺入れを眺めた。
 プリンは、兄妹の実の母以上に、父に似ていた。


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凛子/ALG/su/葉蔵/りこ/雪*華
合作 11/17 一時間程度
2012.11.18 Sun l 合作 l コメント (0) トラックバック (0) l top
その手紙が届いたのは、布団から出るのも億劫な雪の降る朝だった。
一匹のネズミが懸命に窓を叩く音で、私は目が覚めた。
「?今時《使い魔》なんて、おじいちゃんの使いかな?」
ガラス窓を開けてあげると、ネズミは震えながら室内へ入ってきた。

町が燃え盛って焦土になってしまうだなんて、信じたくなかった。
でも、エリヤ・ヘルムの胎児達が来る。
外の寒さのせいで縮みきった様子の子ネズミは、
「コノ、フィリスノマチヲ・・・・・・」と私に伝えて、消えた。

私は少し寝ぼけていたが、窓の外をみて愕然とした。
家の外はまさに炎に包まれて、今にも全てを焼き尽くしてしまいそうであった。
今日は町にゴーレムたちが運ばれてくる予定であったが、炎に巻き込まれないようにすぐに避難することにした。
おじいちゃんの子ネズミが消えてしまったため、おじいちゃんの安否が心配だった。

止めどなく降る雪の中を抜けながら、私は急いで駆け出した。
人通りの少ない裏道を選び、人目につかぬように急いで屋根伝いに町中から遠ざかった。
息を切らして山を登り行く途中、振り返ると、炎に包まれた町の中に今にも燃え尽きてしまいそうな魔法の塔が見えた。
今でこそ過去の遺物と化した魔法の塔であるが、以前は町の栄華の象徴であった。

「そうだ、キジ!それに町の人は……?!」
炎から遠ざかり冷静さを取り戻しつつあった私は、慌てて辺りを見回した。
しかし不思議な事に、避難はおろか、人々の声すら聞こえない。
「そう言えば、火事なのに、雪が溶けてない?」
ブルブルと震えながら、私は息を両手に吐きかけて擦り合わせた。
「またじいさんの仕業か」
振り返ると眠そうな表情のキジがこちらを呆れ顔で見ている。

「町に戻るぞ。あの塔の中に入ったら全部が分かる」
キジはそれだけ言い放つと、やれやれといったようにミハルの肩をぽんとたたき、
雪景色の野山を道なりに下る途中、魔方陣を作った。
私はただその輪の中に入ってついていく。なんだかそっけない気持ちがした。

魔方陣の輪の外に出ると、塔が前に聳え立った。後ろを振り返ると子ネズミを肩においた私のおじいちゃんが立っていた。
「まーたひっかかったな!!」と言い、げらげら笑っている。
「コノフィリスノマチヲ・・・ヨクシッテオキナサイ・・・」子ネズミもニヤけているようだ。
私はムッとして何か言い返そうとしたが、おじいちゃんがまた何かいたずらをするのが怖かったのでやめた。
「人前で魔法を使わないようにするのは、結構な話だが、魔法を見破れないようじゃまだまだ一人前とは言えないな!!ところで、この塔のことだが・・・」

「これは革命前後までは町の中心的建造物として存在していた。この町の政治、文化、経済、そしてあらゆる市民生活の中心であった。しかし今や魔法による統治など必要がなくなってしまった。そのためにこの塔の役割は終わったのだ。それは同時に町の平和も意味する。以前のような人々の絶え間ない争いも見られなくなり、思わぬ外敵に備えることもなくなった。平和の到来はもちろん望ましいことだ。しかしその平和がいつまでも続くとも限らぬ。いつか来るかもしれぬ危機から市民を守るために、魔法能力を受け継いだ選ばれし我々は常に用意が必要なのだ。ミハル、お前ももう子供じゃない。この塔に残された賢人たちの叡智を引き継ぎ、人々の為に尽くすのだ!」
そう言っておじいちゃんは私に一冊の本を渡した。『賢者伝』。
「お前は宿題を楽にする程度のことにしか魔法を使わないからな!見習うのだぞ!はっはっは!」
「余計なお世話よ!」
「それはいいとして少しは塔の中も見てみるかい?」
おじいちゃんは手も触れずに塔の錆びきった扉を開けた。

塔の中は外の寒さが嘘のように暖かかった。
「壁に描かれている文字や魔法陣の多くは、この街に結界を張るものだったり、幻を見せる為のものだったりと自衛としての意味合いが強い。中には雪を降らせたりするものもあるがな」
そう言いながらおじいちゃんは、ニヤリと笑う。
「魔法って言うのは、何の役に立つか分からん物も多い。敵と戦えないゴーレムの虚像。熱さすら持たない幻の炎。しかしそれらを使いこなせてこそ一人前って事なんだよ」

私が小脇に抱えていた本が、ふわりと空中に浮かんだ。
「このファシリティの中では伝送する力の減衰を防げておるからな、ワシの記憶の中のエリヤ・ヘルムをこの場で映し出すことも出来よう」
虚空に浮かんだ青白い光の中にぼんやりとしたひとつの塊が生じていく、それは渦を巻いて次第にヒトの形を成していく。
おじいちゃんは私の顔をじっくりと見つめながら、眉根を寄せてなにか言葉をつぶやいた。その瞬間、ヒトの形をした光が八方に弾けて飛んだ。
塔の中にはじりじりとした音の響きだけが残っている。

「どうだ?何か感じたか?」とおじいちゃんは意地悪な顔をして聞く。
私は正直何もよくわからなかったが、深刻な顔をして適当に答えた。
「この町の歴史ってすごいんですね。はい・・・。」
おじいちゃんは、私に拳骨をくれた。星が見える。

「今のは、ただの光の魔法だ!!例えるならば、花火みたいなもんだぞ!!何もお前には見せていない!!その『賢者伝』よく見て復習しとけ!!」

げらげら笑いながら私の前から離れていった。
私はまたいたずらされたのかと思い、無性に腹が立ったが、おじいちゃんの言いたい事もなんとなく分かった気がしたので、黙っていた。

途方に暮れる私を尻目に、急にキジが唸りだした。と、思う間もなく私の許からおじいちゃんの方向に飛びかかって行った。
「キジ!」
気付いた時にはキジはおじいちゃんの子ネズミを咥えていた。子ネズミは逃れようと足掻くほど傷も深くなる。
私が慌てる一方でおじいちゃんは落ち着いたままだ。
「《使い魔》に仕立てるのなんて簡単なものだ、心配するでない。やっぱりどんな時代でも猫は猫、ネズミはネズミじゃい。はっはっは!」
炎の消えた町にもそのまま雪だけは降り続いていた。



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遠野杏子原案に基づく合作
遠野杏子/su/ALG/オーロラ日和
2012/10/30
三時間程度

2012.10.30 Tue l 合作 l コメント (0) トラックバック (0) l top
「今日は随分とめかし込んでるんだな、デートか?」
 開け放たれた窓から差し込む日差しにウトウトしながら、ソファーで横になっていた三毛猫のキジは、クローゼットを漁る同居人を見て目を細めた。
「違うよ、港で実習。でも班別行動があるから、その時にちょっとね」
 ベッドに何着も服を並べて、ミハルは腕を組んでうぅーんと唸った。
「まぁ、時間に遅れないようにな」キジもうぅーんと唸り、猫特有の伸びをする。
「あ、顔なんて洗わないでよ。雨でも降ったらどうすんのよ」
 姿見の前でワンピースを身体に合わせていたミハルは、毛づくろいをはじめたキジの方を見ると顔をしかめた。
「今日は1日快晴だよ、そんな迷信、今じゃ知ってる奴の方が少ないだろうが」
 飛んできた服を軽やかに避け、やれやれと言った表情で出窓へ飛び移るキジ。漆黒のその瞳には晴れ渡った空が映っていた。

 ここは首都ラスカから遠く離れた町、フィリス。その外れにある古いアパートの2階、南の角部屋がキジとミハルの寝床だ。
 港町としての活気が溢れているものの、都会のような慌ただしさは無く、基本的に人々はのんびりと暮らしている。漸く終結した革命戦争の影響も、元々この町にはあまりなかったようだ。
「戦争、か」キジは時間に追われ飛び出していったミハルを窓際で見送りながら、彼女の父親の事を思い出した。
 かつてのキジのパートナー。魔法の才能に溢れた彼は革命軍の魔人と恐れられ、軍の関係者ではそのの名を知らぬ者は居ない程の男だった。彼が他界してから、もう3年が経とうとしている。
 彼の死と共にキジも現役を引退し、今は彼の娘と余生をのんびりと過ごしていた。
 昔に比べて人も動物も、魔力持ち自体の数が随分と減った。今キジと会話が出来る程の魔力があるのは、この町ではミハルだけだった。

 キジが昔に想いを馳せながら陽だまりの中で微睡んでいると、突如。のどかな昼下がりに相応しくない地響きと轟音が、窓ガラスをビリビリと震わせた。
「なっ、なんだぁ??!」
 慌てて窓から屋根に登り辺りを見回すと、遠くから土煙が上がっていた。
「!あれは、ゴーレムか?!」
 目を凝らすと、港の方で土色の巨人が暴れているようだった。
「ミハルの奴、港で実習って言ってたな」
 キジはそのまま屋根伝いに港を目指して駆け出していた。
 遠くから聞こえる人々の怒号と悲鳴が、嫌でも戦火の中に居た日々を思い出させる。

 キジがたどり着いた時には、辺り一面に積荷や魚介類が散乱し、港は随分な有様だった。
 避難が早かったからか、元から人が少なかったからか、幸い大したけが人は出て居ないようだった。
「骨董品が搬送中に起動しちまったのか」見れば大型の木箱が粉々に破壊されていた。
 地元の自衛団が弓や剣で対抗しているが、土人形の暴走を止めるには至っていないようだった。
「あいつらじゃ役不足か…」キジはチッと舌打ちすると、辺りを見渡す。
 魔法使いや製造者のラビならば対処法も知っているだろうが、魔法とかけ離れた生活をしている彼らにとっては、未知の脅威だろう。
 近くに落ちていた矢を咥えると、キジは再度ゴーレム近くの建物の屋根へ登る。
「《emeth》土人形にゃ《真理》は勿体無いな」
 尻尾でスラスラと空中に青白く輝く魔法の文字を描く。
 宙に浮かんだ文字はそのまま形を組み換え魔法陣に変化した。
「ゴーレムを壊すには、頭のeを消せ。魔法使いにゃ常識だ」
 咥えてきた矢を、目の前に出現した魔法陣に投げ込む。
 矢は魔法特有の青白い光を纏い、一直線にゴーレムの額へと突き刺さった。
 eの文字が削れ、額の文字が《meth》死んだと意味の変わった土人形は動きを止め、次の瞬間にはボロボロと崩れ出した。

「な、なんだぁ?!」
 崩れた積荷を物色していた男は、突如崩壊をはじめたゴーレムを見て慌てだした。そう簡単にやられる訳はないと思っていたが、案外ラビの言う事も当てにならない。
「たまたま矢でも額に当たったのか?ちっ、予定が狂っちまったな」
「幾ら骨董品でも、術者無しで動く訳が無いと思ったが…案の定だな」
「誰だ?!」
 男が振り返ると、三毛猫が窓際に座ってこちらを睨んでいた。
「俺の声が分かるとは、お前も魔力持ちか。それにしちゃ波動が弱いな…ロクに魔法も使えなさそうだが」
「メフィストだと?!どうしてこんな田舎に…」
「メフィストか。久し振りに聞いたな」
 魔力持ちの猫をメフィストと言う。もっとも魔力の無い人間から見れば普通の猫と区別が付かないので、専ら魔法使い間でのみ、その俗称は使われていた。
「ラビから買ったゴーレムで火事場泥棒か。せこいな」
「うるさい!」
 男は腰に下がっていたナイフを抜くとキジに切りかかった。たかが猫一匹に計画を台無しにされてたまるか。
「うるさいのはお前の方だ。少し大人しくしてろ」
 男が最後に見たのは、空中に描かれた魔法陣から現れた巨大な拳だった。

「キジ!さっきのあんたがやったの?!」
 伸びている男を適当なロープで縛ろうと悪戦苦闘していると、背後から聞きなれた声がしてキジは顔を上げた。
「ミハルか、丁度良い。こいつを縛って自警団に引き渡してくれ。ゴーレム騒動の犯人だ」
「え、えぇ?話が見えないんだけど?」
「後は頼んだぞ」徐々に集まり始めた人だかりを見て、じゃあなと言ってキジは撤退した。
 魔法は戦争の遺産。この平和な町には到底似合わない。
 キジの過去を知っても尚、ただの猫として受け入れてくれたこの町の人々に恐れられたくは無かった。

「お手柄だったんだね、キジ」
 その日の夜。夕食をテーブルに並べながら、ミハルは上機嫌だった。
「お、刺身の盛り合わせとは随分と豪華じゃねえか」
 目の前の皿に盛られた赤身にキジは早速舌鼓を打つ。
「港のおじさんがね、お礼だってさ」
「見られてたか」
「別に悪い事したんじゃないんだし良いじゃない」
「まぁ、そうだが…俺は普通の猫で良いんだよ」
 バツの悪そうな表情のキジの頭を、ミハルは優しく撫でる。
「誰もキジが特別だなんて思ってないよ」
「そうか、嬉しいねぇ。だが頭を撫でるのはやめろ。小っ恥ずかしい」
「えー、たまには良いじゃん」
 じゃれ付いてくるミハルを交わしながら、しかしこの瞬間を何よりも愛おしく感じるのも事実だった。
 賑やかな声が響く古いアパートの2階、南の角部屋。今日も港町フィリスは平和だ。
2012.10.24 Wed l 遠野杏子 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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